【新歓展示に向けて】東工大入試物理を「再現性」の視点で分析する
したろう、入試を再現するってよ
今年の新歓展示のテーマは「今年の東工大入試物理を再現する」に先月から決めていました。しかし、今年の問題は果たして再現できそうな問題だったのでしょうか。改めて確認してみます。
ここで、「再現」とは部室で作成可能であるか否かという意味を表しています。
入試問題を観る
今年の入試問題は例えばここで閲覧することが出来ます。
大学入試問題と解答例 - 毎日新聞
複数の某予備校を見るに易化したそうですが、「再現性」からは本当に易化したのでしょうか。
第一問
力学と電磁気学の複合問題です。電荷を帯びた球を電場や磁場の中で振り回すという問題設定です。
さて、この問題において重要なキーワードがあります。それは「一様な電場」と「一様な磁場」です。これは度々用いられる決まり文句ですね。
この第一問が再現できるかどうかは「一様な電(磁)場」が作り出せるかどうかにかかってますね。
第二問
電磁気学と熱力学の複合問題です。理想気体を平行平板で挟んだコンデンサーピストンを操作するという問題設定です。
この問題を再現するには「なめらかに動くピストン」と「極板間引力により動くコンデンサー」を作り出せることが必要不可欠ですね。
第三問
波動と力学の複合問題です。前半はスピーカーから発せられる音を弦に浴びせることで生じる定在波を考察させ、後半は連成振動について考えさせる問題です。
後半はともかく、前半は音源と弦さえ用意すればできそうですね。
再現可能か?
第一問 -> できる
「言うは易く行うは難し」とはまさに物理の問題設定のためにある言葉だと思います。物理学にはしばしば再現が難しい問題設定を仮定します*1。「なめらかで摩擦のない床」、「軽くて質量の無視できる滑車」、「質量が一様に分布している棒」などなど・・・。その内の一つが「一様な電磁場」です。
しかし、「一様な電場」と「一様な磁場」は実用的な範囲で作り出すことができます。それはヘルムホルツコイルを元に改良されたコイル、Merritt 4-coilです。以前、幸福の物理、始動!? - 幸福の物理にてヘルムホルツコイルを作成すると宣言しましたが、予定を変更してMerritt 4-coilを作成します。また、振り子のおもりにかなりの量の電荷を帯びさせるためにWimshurst発電機と呼ばれる静電発電機も作成します。
第二問 -> ムリ。悪あがきでよければ・・・。
極悪な問題設定である「なめらかなピストン」と「平行平板コンデンサー」が出題されてしまいました。前者はかなりの精度が要求されるために、私の技術では到底再現できません*2。
しかし、図2のブリッジ回路だけは再現できそうなので、それだけを作成してみようと思います。
第三問 -> 前半ならできる。後半は感じろ。
かなり楽観視していますが、適当なスピーカーと弦を用意するだけで図1の装置は再現できると考えています。ただ、人間が認識できる程度のスケールで振動が観測できるかどうかは不安です。図2はオシロスコープか、あるいは高校で見た木琴型の定在波発生装置などで再現できそうです。図3は概念なので再現もなにも無いと思いますが・・・。
まとめ
入試問題を再現するために必要なものは次の通りです:
- Merritt 4-coil
- Wimshurst発電機
- ブリッジ回路
- スピーカーとゴムひも
今後の状況やアイディア次第で色々変更すると思いますが、現段階での指針を示すことができました。
└(՞ةڼ◔)」<はじまりはじまりィ~!
*1:物理学ではその学問の性質上、普遍性を議論するために複数の具体的現象から共通した要素を抽出し、それを一般化します。だから、こうした実用的にはありえない問題設定がなされるのは仕方がないことですが・・・。
*2:例えば、 スターリングエンジン 気密性 - Google 検索で検索すると熱機関の設計と要求される精度の凄まじさの片鱗が分かるでしょう。